書評

::2月16日掲載::

今週の赤マル

『「超」怖い話A』 平山夢明編著

 冬に怪談?と言うなかれ。

 本書「超怖」シリーズは、1991年から10年、通巻11冊刊行されていた。これは市井の人の体験談を聞き書きする実録怪談本として類例のない息の長さだった。版元勁文社の倒産という不幸もあり、入手困難な幻の書となっていたが、今回装いも新たに再開、12冊目の刊行となった。

 新たに書き下ろしされた36話を収録。淡々とつづられるのは、幻想的な話、肌があわ立つ恐怖談、思わず笑ってしまうヘンな話など様々だ。

 今回の「復活」は、ネット上で続巻を強く望む愛読者の声にも後押しされたという。グリム童話の「怖がる事を知りに旅立った男」のごとく、「もっと恐怖を」と望むのは人間の性(さが)なのかも知れない。

 コンビニでも売られ、読み捨てにされがちなジャンルだが、ぜひ一度手に取って欲しい。手だれの聞き手である編著者らによって、ケータイなど極めて現代的なモノに潜む異界もあぶり出されていく、大人向けの説話集だ。

竹書房文庫 552円円
(央)

『山の仕事、山の暮らし』 高桑信一著

 山の暮らしにあこがれることがある。都会生活に疲れた、ヤワなこちらが思い描くほどその暮らしは楽なはずもないが、それでもどこか引かれてしまうのはなぜだろうか。

 山を仕事場に選び、そこで暮らす19人の物語。会津・只見のゼンマイ採り、奥会津・檜枝(ひのえ)岐(また)の山椒魚(さんしょううお)採り、富山・仙人池ヒュッテの女主人、尾瀬の冬を撮る元山小屋管理人の写真家、群馬・上野村の83歳の現役猟師など、山に生き、山に生かされる人々を10年の歳月をかけ、追い続けたルポルタージュである。

 どの物語から読み始めてもいい。物質的には決して豊かではなくても、穏やかな時間の流れるその暮らし方が、心の琴線に触れ、静かに共鳴するのを感じるだろう。

 〈山の機嫌をうかがい、山の都合に合わせて生きて行くかぎり、山は裏切らない〉という山椒魚採りの名人・星寛(ゆたか)の言葉に、山暮らしの術(すべ)と極意が凝縮されている。文章は的確で分かりやすく、対象を見つめる目が温かい。

つり人社 2400円
(譲)

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